2010年5月20日木曜日

カッティングブレーキ PART 1


トライアルやロッククローリングで使われるカッティングブレーキだが、なぜカッティングブレーキと呼ばれるのかご存じだろうか。ある友人が「ブレーキラインちょん切って装着するからだろう」と言って皆を笑わせてくれたが、実はこれ、ほぼ正解なのだ。なぜかというと元々 Cut - in Brake が、Cutting brake の語源だから。といっても Cut - in は「ちょん切る」のではなくて、「割り込む」という意味なのだけど。つまり通常のブレーキ回路の働きに必要に応じて割り込んで機能させるので Cut - in  なのだ。
前の記事「スポーティング・トライアル」のコメントへのレスで、英国では fiddle brake とも言うと書いた。英国口語では「ズル」なんだけど、フィドルというのはバイオリンの別名でもある。(というか口語以外だとこちらが普通の意味)確かに、滑る路面で必死にトラクションを求めて、せわしなくレバーを押したり引いたりする様は確かにフィドルの早弾きを思わせるものがある。

2010年5月17日月曜日

スポーティング・トライアル


メジャーとは言えない競技なので、ご存じの方はあまりいないと思うが、スポーティング・トライアルは英国やアイルランドで楽しまれているモータースポーツ。2輪駆動の自動車でオフロードを走るトライアル形式の競技で、由緒正しい紳士のクラブスポーツ。競技者のいでたちも、レーシングスーツなんか着ちゃいないし、野暮なヘルメットも被っちゃいないところがいかにも英国風。おっと、足元はもちろん長靴です。Country Gentlemenの伝統ですな。
スポーティング・トライアルの起源は、世に自動車が普及し始めた頃にも遡る。ゆえに競技の車両規則も伝統に則ったものだ。2シーターのロードスタースタイルで2輪駆動、タイヤはクラシックサイズ(細い!)のオンロードタイヤ(!)、デフロックなど差動制限装置はなし。要は古き良き時代の小型スポーツカーのカタチ。マーカーを縫って競うのでカッティングブレーキ(実体は左右独立のハンドブレーキだ)は認められている。そんなんじゃたいしてオフロードは走らんだろうと思いきや、これが4駆はだしの走破性を見せるのだ。まずはYouTubeの動画を見て欲しい。

2010年5月16日日曜日

シンセティックロープ PART 1




このところ何回かシンセティックロープについて質問されたので、その説明をまとめてみた。最近ウインチにシンセティックロープを使う人が増えてきた。ワイヤーよりも軽量だし、しなやかで扱いやすいところが好評を呼んでいる。というか、本場のロッククローリング・シーンで有力選手達がシンセティックロープを使っているせいで、流行し始めたようだ。ま、カタチから入るのは悪いことじゃない。それも趣味の楽しみ方だから。でも効能をお勉強しておくと、友達との茶飲み話がもっと楽しくなると思う。

2010年5月12日水曜日

Land Rover - その古き良き時代を見る


ランドローバーマガジンの読者なら、ランドローバーのメカニズムや歴史について書いた小生の記事をご覧になったこともあると思う。執筆していていつも感じるのは、ちょっとしたトピックの解説をするにも「あ~動画でもあれば一目瞭然なのに…」ということ。そこで小生の筆の至らないところを補う映像はないものか?とYouTubeで探してみた。
で、いくつか見つけたので紹介しようと思います。今回とりあげるのはシリーズ・ランドローバーのプロモーション映像で、タイトルは Land Rover - All in a Day's Work。All in a Day's Workとは意訳すると、「どんな仕事も朝飯前」というようなこと。ランドローバーが「万能なワークホース」であることを目指して造られたという事実がよく判る。実に様々なオプションが紹介されているので、メカ好きなら必見。古い映像なので、埋め込み動画のあとに、タイムコードに沿って簡単な解説をつけておきました。動画は2部構成です。

2010年5月6日木曜日

キャプスタンウインチ その2




構造はどうなってるの?
キャプスタンウインチの中身は上の図のようになっている。これはランドローバー純正オプションに採用されていたフェアリー製キャプスタンウインチ。同じものは古い軍用ジープでも使われていた。(時系列的にはそちらが先なのだ)シリーズ・ランドローバーの初期にはエアロパーツ社製が採用されていたが、キャプスタン部分の意匠は異なるが、機構部は同じと言って良いくらい瓜ふたつ。図は左奥が前で、右手前がエンジン側だ。機械式PTO駆動なのだが、いわゆるPTOギアボックス経由ではなく、動力はエンジンのクランクシャフト前方から得ている。
その辺がどうなってるかというと、ちょっと図では判りにくいが、エンジン始動用のスターティング・クランクを接続するフランジ部分にPTOシャフトを繋いで直接動力を得る仕組みだ。その部分にドッグクラッチがあってオン・オフを切り替える。減速はウォームギアセットで行う。ウォームギア(インプット側)とウォームホイール(キャプスタン側)には非可逆性(ウォームギアから回せるが、ウォームホイールからは回せないということ)があるので、これがブレーキの役割も果たす。

キャプスタンウインチ その1



キャプスタンウインチってご存じですか?いびつなキノコみたいな形状のキャプスタンにロープやワイヤーを巻き付けて使うタイプのウインチです。多分多くの方が、古いランドローバーのフロントに装着された姿をご覧になったことがあると思う。普通の(ドラム式という)ウインチがワイヤーをドラムに巻き取っていく方式なのに対し、キャプスタンウインチではワイヤーは「引っ張るだけで、巻き取りはしない」という仕組みになっている。
何が便利か?というと、ドラム式と違ってリーチ(引っ張ることのできる距離)が自在だということ。ドラム式だとそのドラムに巻けるワイヤーの長さ(30mから45mほど)がリーチを決めてしまうが、キャプスタン式だと長いロープやワイヤーを用意すれば、理屈上はリーチの制約がない。
逆に不便なことは、ドラム式と違ってロープはどこにも固定されていないので、人の手でロープにテンションをかけておかないと、キャプスタン上を滑ってしまって巻き取りできないということがあげられる。つまり作業者がひとりだと、セルフリカバリーには使えないということだ。なんか使いにくそうだなと思うでしょ。でもキャプスタンウインチって、実はいいとこも沢山あるんです。