2010年6月27日日曜日

検索ノススメ(お知らせ)

当ブログからのお知らせです。
「思いつくまま四方山話」も次第に記事が蓄積されてきて、トップページに表示されない過去記事が多くなってきました。過去記事をご覧になるにはサイドバーの「過去の記事を読む」、もしくは「テーマ別に読む」をご利用いただいていることと思います。
過去記事を読む方法としてはもうひとつ、サイドバーの「このブログ内の記事を検索」で検索する方法があります。例えば「え~っと前にウインチ関係の話で気になるネタがあったよなぁ」というときは、検索窓に「ウインチ」と入力して検索ボタンを押せば、「ウインチ」という言葉の出ている全ての記事が一覧表示されます。

2010年6月26日土曜日

OTC2010座学@インプスが開催されます


OTC2010座学@インプスの開催スケジュールが決まりました。OTCことオフロードトレーニングキャンプは2008年から始まったオフロードドライビングスクールですが、その前身は、ロシアンラリー参加者向けのオリエンテーションの一環として主催者から依頼されたドライビングスクールでした。
ロシアンラリーは数日間に渡るオフロード漬け体験のできる楽しいイベントですが、同時に人も車もずっとオフロードと格闘し続けなくてはならないという試練でもあるわけです。よって参加者が同イベントを楽しむには、ドライビングやレスキューの基礎をしっかりと身につけておくことが必要だったのです。
短期間にロシアのオフロードを走れるだけのノウハウを習得してもらう「中味の濃い講習」とはどういうものか?試行錯誤の末たどり着いたのが、全ての要素を「見る、考える、動かす」という3ステップで学ぶという手法で、これが現在のOTCにも継承されています。
人が物事を体得するには「いつでも思い出して活用できる記憶」を形成するのが一番良いのだと言われています。そのためには、思い出すきっかけをたくさん身につけておくことがポイントになります。「見る、考える、動かす」の3ステップのうち、「見る」と「動かす」は実際のオフロードでしか講習できませんが、それと同じくらい重要な「考える」という要素は、実はオフロードの現場では体得するのが難しいのです。だって目の前にオフロードがあったら、とにかく走ってみたくなりますよね!でも「考える」はオフロードドライビングを学ぶ上で、スルーしちゃいけない大切なものなんです。
考える」ためには基礎的な科学知識を知っておく必要があります。クルマがなぜスタックするのか?どうすればトラクションが得られるのか?基礎的な科学知識さえ持てば、こういうことがすんなりと読めるようになるのです。そんなわけでOTCには他のスクールにはない座学が設けられたのです。仕組みが判ると、どうすれば走れるのか?ということがとてもクリアにイメージできるようになります。
今回、OTCのコンセプトに共感していただき、自らもOTC普及に一役買って出てくれたインプスさんの主催によりOTC2010座学@インプス(7月25日)開催の運びとなりました。只今参加者の「へ~」や「なるほど!」という声を聞くのを楽しみにしつつ、鋭意座学の講習スライドを作成中です。是非ふるってご参加下さい。詳細および申し込み手続きはインプスさんのホームページ(http://www.imps.co.jp/motorsports/index.html)から。

2010年6月22日火曜日

ねじれはダメ、というお話

このところリギングに関する話題をたくさん書いたので、物置からレスキューツールなどを引っ張り出して遊んでみた読者もいるんじゃないかと思う。そこでちょっと思い出した小ネタを紹介しておくことにした。それは「リギングは捻れていてはいけない」ということ。リギングの捻れはトラブルの元、特に大きな力を必要とする作業では、ロープ(ケーブル)やスナッチブロックの破損にも繋がりかねないのだ。
スナッチブロックとロープ(ケーブル)は同一平面で動くものだが…
レスキューではダブルラインをよく使うけれども、その時にアンカーとレスキュー車(あるいはウインチ車)が違う高さに位置するという状況がよくある。このことがしばしばトラブルを起こす。下のイラストのように、基本的にスナッチブロックとロープは、アンカーとレスキュー車の高さが違っていても、テンションが加わると自然に同一平面上に整列する。もちろんこれはスナッチブロックが回転して向きを変えてくれるから。
問題はスナッチブロックが自由に向きを変えられない場合に起きる。スナッチブロックをスタック車の牽引ポイント(フックなど)に繋ぐにはシャックルを使うと思うが、そうするとスナッチブロックが自由に回転できる範囲というのは意外に狭いのだ。するとどうなるかというとイラストの左側の状態のように、ロープ(ケーブル)とスナッチブロックが強く干渉したまま牽引することになってしまう。これが摩擦でロープが切れたり、スナッチブロックを傷めたりする原因になる。

2010年6月19日土曜日

オフロードの走行力学 等速協調駆動編

4輪駆動車が優れた走破性を発揮できる理由にはいくつかの要素があるのだが、中でもオフロードドライビングテクニックに深く関わっているのが「等速協調駆動」という仕組みだ。OTCで教えるドラテク実技の多くは、この等速協調駆動のメリットを最大限活用するための手法だといっても過言ではない。だからこの仕組みを理解し、走行中にいつもそれを意識することが大切だ。
等速協調駆動とは?
パートタイム4WD(センターデフをロックできるフルタイムも)は4WD走行時に前後アクスルが直結される。よって前後アクスルは常時等速を保って駆動される。そのため一方のアクスルが滑りやすい路面にあっても、回転速度はグリップのある側のアクスルと同一のままに保たれるので、トラクションを確保しやすい。つまり前後アクスルの回転はいつも等速になるように互いに干渉し合っているわけだ。これを等速協調駆動という。
平らな路面でもこの特性はトラクション面で有利だが、本領を発揮するのは起伏のある路面だ。例えばフロントアクスルが段差に乗り上げる場合、段差が大きく急(垂直段差のように)であると、そのアクスル単体ではグリップを得られない。ところが前後アクスルが直結駆動される4WDでは、リアアクスルの駆動力によって乗り上げ側のフロントアクスルが押されるので、それによって段差に押しつけられてグリップを得ることが可能になる。この仕組みで等速協調駆動される前後アクスルは、互いに押したり引いたりし合いながら等速で回転することによって、不整地でも単に4輪に駆動力が分散されている以上のトラクションを発揮することができるのだ。

2010年6月18日金曜日

OTC リギング講座(ダブルラインの力学編)

OTC2010座学@インプスの開催も決まったので(日時はまだ未定ですが)、参加をお考えの皆さんの予習もかねて、今回はカリキュラムの一部であるリギングについてのお話。リギング(Rigging)とはレスキュー用のロープ(ケーブル)のレイアウトのこと。ロープ(ケーブル)とスナッチブロックを使うレスキューは、ソフトカーロープなどを使う直引きよりも手間はかかるが、困難な状況にも対応できるという点ではベストなソリューション。
さて、ロープとスナッチブロックの使い方というと、お馴染みのダブルラインやトリプルラインというリギングが登場する(もちろんOTCでも教えます)のだけれど、現実のオフロードでは理科実験用の滑車模型のように都合良く真っ直ぐなラインでリグは組めない。そこで科学的かつ実戦的に、をモットーとするOTCでは効率の良いリグを組むために「力を計算してみる」手法を推奨している。つまり現実のリグにはどのように力が掛かるのか?ということを考えるのだ。例えば初級コースではこんな話をする…
Q:下の図のように、ダブルライン(ラインの角度は60°)で、スタック車をレスキュー車が約1tの牽引力で引っ張る(青矢印)と、スタック車Bにはどのような力(赤矢印)が加わるでしょうか?力の向きは?力の大きさは?

正解は「もっと読む」でジャンプした先に書いたので、まずは考えてみて下さい。

2010年6月12日土曜日

都市伝説にご用心! Reverse winch recovery

うっかりしてると信じてしまいそうな都市伝説ってありますよね。よ~く考えれば気づきそうなものなんだけど、語ってる当人がその話を信じ込んでる場合には妙に説得力があって、聞いてる方もつい「そうなんだ」なんて思ってしまう。4駆の世界にもそういう話があるんです。そのひとつがリバース・ウインチリカバリーってやつ。この図のようなリギング(ラインの取り回し)を使って、「ウインチを使って自分の車をバックさせる」というのです。



まあ、以下の動画を見てやって下さい。最初に言っておきますが、この動画で紹介されてるテクニックは、全くの間違いですので、信じちゃダメですよ。

2010年6月5日土曜日

シンセティックロープ PART4



シンセティックロープは従来と違った使い方も可能


エクステンションロープとして使うなら
シンセティックロープはエクステンション(延長)ロープとして使うのに最適だ。なにしろウインチロープと違い熱の問題がない。これまで書いたとおり、高級な保護レイヤーを備えたロープが最もヘビーデューティなのはこの場合でも同じ。ただしドラムに巻き取られるわけではないので砂や泥を噛み込んだまま強い力が掛かる心配は少ないので、かならずしも高価なブレイデッド・ロープを選ぶ必要性はない。またブレイデッドでない普通のタイプはとても軽量(水に浮く比重)で、手触りもしなやかで取り扱いが楽だ。また普通タイプだと価格的にかなりお求めやすいのも魅力。エクステンションロープの場合、使用するクルマの重量の3倍くらいの耐荷重性があるとオールマイティに使える。





シンセティックロープ PART 3

ウインチとシンセティックロープの関係

ポピュラーな普及品Amsteel Blueの装着例
あえて旧式なスチールワイヤーを選ぶのも正しい
強くて軽くてしなやかなシンセティックロープは魅力的だが、ウインチのドラムに巻いて使うなら、オールドスタイルのスチールワイヤーの使い勝手も捨てがたい。噛み込んだり、ささくれだったり、キンクしたりという旧弊やその重さに目をつむるなら、少々岩を擦ろうがウインチ本体が熱を持とうが気にせずに使えるワイヤーのタフさはやはり頼りになる。正しくウインチを使いこなす技術を持つ人なら、既に長い実績のあるスチールワイヤーの方が信用できると思うことだろう。私自身もウインチロープは「どちらを選んでもいい」と思っている。扱いやすいシンセティックロープも、ヘビーに使うには色々と注意すべきことがあるし、コストだって嵩む。ただしウインチング時のエクステンション(延長)ロープとして使うには、シンセティックロープが断然有利なので、こちらの場合はもう敢えてワイヤーを使うという時代ではなくなったと思う。
ウインチにシンセティックロープを使うという選択
ウインチをエクストリーム競技で使うのなら、ウインチロープにはシンセティックが最適。軽量かつ圧倒的な引っ張り強度がものをいう。巻き取りを高速化する改造を施された競技用ウインチでは、ワイヤーはしばしば巻き取り時のショックで切れてしまう。またワイヤーは頻繁にジャムを起こすので、これも競技ではロスの元。しなやかなシンセティックロープはドラムでジャムを起こしにくいし、高級ロープならワイヤーと同程度の径で引っ張り強度は2倍以上もあるのだ。ロッククローリング競技では足場の悪い岩場で素早くウインチラインを設置しなくてはならないから、シンセティックロープの軽さは重要だ。ではそれ以外の普通の使い方ではどうか?そこでは「熱」の問題を考えなくてはならない。電動ウインチはヘビーに使うと驚くほど発熱するからだ。シンセティックロープの非常に大きな引っ張り強度も、高温(人が触って熱いと思う100度くらいから)状態では著しく性能低下するのだ。ほんの数メートル引けばスタック脱出できる、というような条件でしかウインチを使わないという人(多くの人はそうだが)なら熱は問題にならないものの、ヘビーに使うとなると、「並の」シンセティックロープでは役者不足は否めない。

シンセティックロープ PART 2

ハイスペックな2重構造のシンセティックロープの例
シンセティックロープの選び方
オフロード用に限ってもシンセティックロープとして販売されているロープにはいくつかの素材がある。前回書いたように、伸びないことが求められる用途では、どれも基本的に芳香族骨格ベースのポリエチレン系ロープなので素材の特性は同じようなものだが、完成品のロープとして販売される状態では、大別してふたつのタイプがある。ひとつは非常にしなやかで柔らかく曲がるもので、もうひとつはぎゅっと締まった手応えで、きついRでは曲がらないタイプのものだ。両者は手に持ったときの印象も随分違うので、始めてシンセティックロープを購入しようとする時、その性格の違いを理解しておかないと、どちらを選べば良いのか迷ってしまうものだ。