2012年3月16日金曜日

ソフトカーロープは便利だけど


 いつも役に立つソフトカーロープだけど、ついその手軽さに慣れてしまって、ソフトカーロープ一本槍になってませんか?スタック車のボディが路面に干渉してても、深い溝の中に落ち込んでいても、構わずソフトカーロープで引っ張ったりしてませんか?
ソフトカーロープはワイヤーで牽引することのに比べると遥かにショックが小さい点が優れているのですが、この効果を過信すると手痛い目に逢います。
 ソフトカーロープはごく僅かに与えられた弾性を利用して、引き始めのショックが掛かる時間を、ワイヤーの10倍から100倍くらいの時間に分散してくれます。だからとてもショックが少ないのですが、それが10倍から100倍といってもごく短時間に大きな力を加えることに変わりはありません。ワイヤーとソフトカーロープの特性を例えるなら、鉄ハンマーとカケヤのようなのようなものです。どちらも短時間に大きなエネルギーを対象物に与えます。
 ソフトカーロープ牽引の基本は、最初はソロリと引き、様子を見てから強い力で引くということ。注意しなくてはならないのは、様子を見たあと2回目に引いてみて、スタック車がビクともしないような状況です。この状態はそのまま引くとボディに大きなダメージを与える可能性があることを示しているので、もう少し楽に引き出す方法は無いか、一度再考してみるベキなのです。
 ソフトカーロープで勢いよく引くというのは、とても大きな力を掛けるということです。もともと作業車だった昔の4輪駆動車のラダーフレームは頑丈で、牽引フックも強度がありました。しかし最近は軽量化が重視されていて、フレーム構造も牽引ポイントも昔ほど強くできてはいない場合が多いのです。徐々に力を増して牽引しようとする場合、本当にもっと勢いをつけて引いても大丈夫か?ということを毎回再考することをお忘れなく。
 スタックしてる人は助けてもらうという立場なので、何となく言い出しにくいものですが、このソフトカーロープでのレスキュー中にボディがダメージを受けることは想像以上に多いのです。具体的にはフックが壊れたり、フックの取り付け部周りが変形してしまったりします。
 ソフトカーロープでのレスキューは手軽ですが、あくまでも瞬間的に大きな力がかかるものなので、悪条件下ではデメリットも多いのです。まず引っ張る方向に制約がある。さらに真っ直ぐ引かないと効率が悪いだけで無く、スタック車にダメージを与えやすくなります。またレスキュー車は足場の良いところに陣取っていなければなりませんが、現実的にはそう都合よくは行きません。だからレスキュー車までスタックするというパターンも少なくありません。
 そういうわけで中級クラスのOTCではロープとスナッチブロックを使い、リギングでレスキューする方法を学びます。巧みなリギングを駆使すれば、難所のスタックレスキューもより安全・確実になります。人類が発明した最古の道具のひとつである「滑車」は、難所に挑むオフローダーが是非使い方を知っておくべきものなのです。