2010年4月27日火曜日

ウインチ雑感


YouTubeで興味深いウインチング映像を見つけた。このランクルに装着されているウインチはRunvaのHWP10000というモデル。走ってる場所は東欧のラトビア共和国で、延々と続く深い泥の轍で、これは連続高負荷運転となるので、ウインチにとっては相当厳しい条件だ。並の電動ウインチでは1ピッチ(ドラムに巻かれたケーブルの長さ)を連続して巻き取ることすらモーター焼損などのリスクを伴う。ではなぜこの映像のように連続して巻き続けられるのか?それはこのウインチが油圧モーター駆動だからだ。(もっと読むで動画が見られます)


油圧ウインチのメリット
  電気モーターは負荷が大きくなると大電流が流れる。とりわけストール(負荷に負けて停止すること)付近では、一気にコイルに大電流が流れて発熱する。モーターが煙を上げるのは、その熱のせいでコイルを絶縁しているレジンが溶け出しているのだ。同時に大電流を流すせいで、電源であるバッテリーにも大きなストレスが掛かる。そしてバッテリーのダメージとモーターの過熱は負のスパイラルに陥ることになる。だから電動ウインチをハードに使い込むには電装の強化が必要なのだが、その話はまた別の機会に。
 これに対して油圧モーターは発熱が少ない(もちろん熱くなるけど)し、熱によって負のスパイラルに陥ることがないので、連続運転が可能なのだ。この点はPTOウインチと同じ。実際、油圧ウインチは油圧式PTOなのだ。油圧ウインチには機械的なヒューズ(PTOのシアーピン)がなく、駆動力が負荷に負ける状態ではストールするだけ。このストールは電気モーターのストールと違って本体にダメージがないというのも良いところ。



 このRunva HWP10000は油圧モーター式の2スピードウインチで、製造元は中国浙江省の会社。現時点では東欧に代理店はないので、個人輸入したものだろう。油圧ウインチというとMileMarker(米国、フロリダ州)製を思い出す人もいることだろう。私もMileMarkerはロシアンラリーのオフィシャルカーに装着して何年か使用した経験がある。確かに車のパワステポンプから油圧を得てウインチを動かすアイデアはMileMarkerがオリジナルなので、その点では後追い製品だといえる。

ラトビア風の改造がまた凄い!
 この映像では非常に速い巻き取り速度が印象的だが、それはRunva HWP10000の油圧モーターが高性能ということだけで実現できているわけではない。映像では紹介されていないが、この車の場合、大出力大流量の油圧ポンプが装着されているようだ。同クラスの油圧ウインチを使った経験からいうと、通常のパワステポンプからの分流という設定ではないと思う。多分吐出圧力で5割増、流量が倍くらいの大型ポンプを追加装着していると考えられる。
 手間の掛かる改造だが、何ピッチでも延々引き続けられる油圧ウインチのスタミナに、速い巻き取り速度をプラスするという恩恵からすれば、安い投資ともいえる。改造といえば、この車のHWP10000はもうひとつ有益な改造が施されている。それはクラッチと2段変速を、ノーマルの手動レバー式からニューマチック(空気圧)アクチュエーターを使ったリモコン式にしていること。
 HWP10000のレバー自体良くできていて、1本のレバーを直線的に動かすだけでクラッチ・インから変速まで操作できるのだが、この車のオーナーはそれでも満足できなかったようだ。HWP10000のギア系はアウトプットギアとプラネタリーケージの2カ所をスラスト方向に動かすことで、クラッチ断続と変速(シンクロされてる)を行う。改造はここに目をつけたもので、その2系統に空気圧を掛けることでリモコンを実現している。
 どう見てもプロのエンジニアの手による改造。東ヨーロッパにもプロショップがあるんだろうか?ともあれ東欧ラトビアのオフローダーのマニアックさは相当なものだ。

5 件のコメント:

  1. パワテコウインチ強力ですね。壊れるまで引けるのは、魅力です
    スピード・パワー共油圧ポンプが命ですから。アフターマーケットパーツでもっと簡単にパワステポンプが交換できれば導入検討する方が多くなると思います。エンジンガ止まらない限り引ける水没時は駄目か”

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  2. tatsuoさん、本ブログ初のコメント、ありがとうございます。電動のいいところはバッテリーさえ生きていれば、エンジンが止まっていても「とりあえず動く」ことですね。最新のは防水性もよくなって、水中でも「とりあえず動く」が実現されてます。またバッテリーが倒立でも使えるような高級品だと、転倒してても動きます。もちろん動かす前に安全確認は必要ですけど…

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  3. 早速の解答有難う御座います。パワテコ強力なやつほしいですね。
    KDSSが付いたプラド何か走りそう YouTubeでデモ見たんですトマルチテレインセレクトも付いています?切り替え時のタイミングのずれが
    結構ありそうでその為ストロークなどに弊害が出そうな気がします
    万人向け・海外ユーザー向けの装置なのかSUV(クロカン)向け装置では不必要のような気がします。プラドはクロカン車じゃ無いか!

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  4. どれくらいの油圧と流量のポンプを使っているのでしょうか?国内で入手が可能なら使ってみたいと思います。
    2年ほど前に冬の林道で雪に埋まってウインチを使って進んでいたらウインチが止まってしまい、同時にバッテリーも上がって死ぬ目に遭いました。ハンティングの時でしたので電話が通じるところまで歩いて行って仲間に求縁を求めで脱出しましたが、油圧ウインチですと心配が無いかも。
    自衛隊のウインチが油圧に変わっていますね。

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  5. hiroさんコメントありがとうございます。入手方法ですが、RunvaもMilemarkerも現在国内に代理店はないようです。なのでなんらかの方法で輸入するしかありません。油圧や流量の件ですが、以前調べたリストが今見つからないので、具体的な数値でお答えできませんが、以前私がFZJ80にMileMarkerを装着使用した経験から言うと、牽引力的にはノーマルのパワステポンプからの分岐でも、ウインチスペックの9割くらいは発揮できます。なので油圧はノーマルポンプ程度でもOKです。流量は問題でして、電動ウインチに慣れた方には「フルロード時のように遅い」と感じることでしょう。
    ポンプのアップグレードをするなら、ノーマルの2〜3倍の流量を持つポンプなら「割と普通に使える巻き取りスピード」が得られると思います。
    英国の友人によれば、ボッシュ製の油圧ポンプに手頃なものがあるということですが、どちらにせよブラケットは自作しなくてはなりません。
    PTOを備えたクルマなら、PTO駆動の油圧ポンプを使うのが理想です。それこそノーマルの5倍以上もの流量を持つポンプが沢山ありますから。これは英国やオーストラリアでキットが販売されています。
    もし興味がおありなら、再度コメントいただければ海外の販売元の情報をお知らせします。

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