2011年4月22日金曜日

GPSを使ってみよう その2

*今回はその1からの続きです。
「GPSを使ってみよう」なんてタイトルをつけてるのに、いっこうにレシーバーの電源を入れる話に進まないのには訳がある。確かに今時のハンディGPSは家電製品のように買って直ぐ使い始めることが出来る。スイッチオンで衛星を捉えたら、画面の地図に現在地が出て、動き出せば地図の上に軌跡が描かれる、というくらい簡単。
しかし当ブログではオフローダーやアウトドアズマンが実用的にGPSを使うという前提で記事を書いているので、「いったいどのくらいGPSは信用できるのか?」や「どのように使えば実用的ナビゲーションとして役立つのか?」という内容を紹介したいと思っている。そういう話をするためには、GPSとはどういうものかという予備知識が欠かせない。ということで、もう少し基礎知識編にお付き合いいだだきたいと思う。

GPS衛星からの電波はとても微弱だけど
GPS衛星が発信している電波は随分弱いものだ。なにせGPS衛星は20200kmもの上空にあり、電源はわずか数百ワットという出力の太陽電池パネルに依存してるから、もともと強力な電波を送出する能力はないのだ。だからGPSレシーバーは良いアンテナを持つことが大切なんだけど、ここではそういう話じゃなくて、GPSにはそういう弱い電波でも信号を正しく伝えるための仕組みがあるということを紹介したい。
弱肉強食の法則
無線信号は、同じ周波数で複数の信号が発信されていると、アンテナはどちらの電波も捉えるけど、弱い電波に載せられた信号は強い電波に載せられた信号にかき消されてしまう。これがアマチュア無線をやる人がよく言う「弱肉強食の法則」だ。我々がお世話になっている民生用のGPS信号は1.5GHz帯の電波で送出されている。だからGPSレシーバーが1.5GHzあたりの他のノイズ電波を受けると、出力の弱いGPS信号はかき消されてしまうことになる。
それでは都合が悪いので、GPS衛星から発信される信号はひと工夫されている。さきほどGPS信号は1.5GHz帯と書いたが、この「帯」がノイズの影響を回避する鍵。要するに信号データを広い周波数=周波数帯に分散して送出している。だからその周波数帯の中の特定の周波数がノイズによってかき消されても、残りは影響を受けないのだ。
でもノイズによって失われたデータはどうなるの?と思うことだろう。ご心配なく。そういうことを考えて元データが造られているのだ。それはこういうこと。GPSが送出する信号はかなり小さなデータ量だ。そこに人工的に生成された乱数を加えながらデータを膨らませるという方法で、信号を広い周波数帯に拡散させている。だから、一部がノイズによってかき消されても、消失するデータは少なくて済むのだ。また、コンピュータの通信と同様にデータの冗長化(つまり繰り返し)と誤り補正のアルゴリズムも利用しているので、仮に一部を失っても機能が損なわれないようになっている。
あれ?GPS衛星って皆同じ周波数帯だけど…
さっき弱肉強食の法則と書いた。ならGPS信号が全部同じ周波数帯で送出されてるのなら、電波がレシーバーに届いても一番近い(信号の強い)衛星からの信号だけしかキャッチできないんじゃないの?ごもっとも。でも大丈夫です。GPSの電波は一部の携帯電話などと同様CDMAという方式を使っています。CDMAは同じ周波数帯の中に複数の信号セットを載せるための方法で、さきほど「人工的に生成された乱数」と書いたものはそのための仕組み。この乱数生成のパターンが衛星ごとに異なっているのがミソ。
GPSレシーバーは聖徳太子?
GPSレシーバーは受信したデータから、乱数で膨らまされた余分な情報をそぎ落として、本来のデータを取り出すため、それぞれの衛星が生成する信号を解読する鍵を持っている。この鍵を順番に使ってデータを取り出すので、その間それぞれの鍵に合わない情報はノイズとして無視できる。だから多くの衛星からの電波を同時に受信しても、個々の衛星からの信号を区別して取り出すことができるというわけ。
現代のデジタル携帯電話サービスの交換器は、同じ周波数帯の電波で沢山の端末からの通信を同時処理していますよね。それでいて特定の端末を選んで通信できるし、混信することもない。GPSはそれと同じ方法で、同じ周波数帯の複数の信号を処理できるわけです。子供の頃に偉人伝として、聖徳太子は一度に大勢の人の話を聞くことができた、とよく聞かされました。いわばGPSレシーバーは科学の力を借りて、そういうことを可能にしてるわけです。
精度を確保するあの手この手
精度を上げるには、なんといっても多くの衛星を捉えるのが一番。現在GPS衛星は24基フル稼働+スペア衛星という最適環境で機能している。軌道の話は省くが、衛星の配置と軌道が最適状態にあるおかげで、地上にあるレシーバーは障害物のない環境では24時間いつでも、常時6個以上の衛星が捉えられるようになっている。

0 件のコメント:

コメントを投稿