2011年2月2日水曜日

「寒い」を科学する 基礎編

寒い日が続きますが、皆さんは「なぜ寒いんだろう?」と考えたことありますか。もちろん寒いと感じるのは体温が奪われていくから。つまり熱が体から外へと移動していくということです。凍てつく冬にアウトドア活動を楽しむ粋人なら、この熱の移動の仕組みを思い出すと、色々と防寒策を考えるのに役立つと思います。
熱は温度の高い側から低い側へと移動を続ける
まずは基本のおさらい。熱は温度差のあるものが接しているとき、両方の温度が同じになるまで、温度の高い方から低い方へと流れ続けます。だから気温が体温より低ければ、体の熱は外に運ばれ続けるわけです。そしてその熱の移動には伝導・対流・放射という3つのパターンがあります。

伝導
熱伝導は温度差のある物質が接している時に起きる熱の移動。この熱の移動を皮膚に備わる感覚器である温点が感知して、体温より低い冬の外気を冷たいと感じる。面白いのは、同じ外気温まで冷えているはずなのに、触れる物の種類によって冷たさが違うということ。一晩表に出しておいたものなら、その温度は気温と同じはず。でも、外気自体の冷たさより、なにか金属に触れた時の方が冷たいと感じる。
熱伝導率
これは空気と金属では熱伝導率が違うからです。熱は、温度による物質の分子の振動や電子の運動によって物質の中を伝わっていきます。金属の分子は密なので振動が伝わりやすく、また金属内は電子の移動も容易なため熱は早く伝わります。短時間に大量の熱が移動するので、金属に触れると冷たいと感じるわけです。例えば鉄と空気の熱伝導率は実に3400倍も違うのです。空気は熱の不良導体、金属は良導体ということです。
対流
対流は、過熱された物質が流動することによって熱が移動することです。身近なものでは水や空気(つまり液体や気体)で起きます。熱は温度差が大きいほど早く伝達されるので、熱を受け取る側の物質が次々移動していけば、それだけ早く熱が移動するわけです。風が吹くと同じ気温でも寒く感じるのもこの対流が原因。
湯を沸かすときのヤカンの中では熱対流(熱せられ膨張し比重が軽くなった水が上昇し、まだ温度の上がってない重い水が下降することで起きる対流)が生じることで早くお湯が沸く。先程の風だって大気の熱対流の産物。
放射
放射は文字どおり熱を発散すること。熱による分子等の運動が電磁波(赤外線)を発生し、これがエネルギーを運ぶ。電磁波によるエネルギーの移動だから、放射は真空中ですら熱を運ぶ。電気ストーブが暖かいのも、炭火で焼き鳥ができるのも、焚き火にあたって暖かいのもこの放射という仕組みによるもの。空気が熱の不良導体であるにもかかわらず、寒気の中で体が冷えていく背景にもこの放射がひと役かっている。
サバイバルキットに含まれるマイラーフィルムにアルミを蒸着させた構造を持つ「レスキュー・ブランケット」はアルミ被覆によって赤外線を反射させることにより、体温の放射を防いで断熱効果を得るもの。またこの素材には通気性がなく、防風効果も高い。同時に透湿性もないので、体から放出される水蒸気によって熱が奪われるのも防ぐ。

0 件のコメント:

コメントを投稿