2010年7月1日木曜日

カッティングブレーキ PART 2(小回り旋回の真相)

カッティングブレーキは、仕組みとしては単純に1輪に効くブレーキだから、誰に教わらなくても操作は簡単、曲がりたい方に効かせればいい。でも本当に効果的に使うには色々と工夫が必要なのだ。今回は代表的な3つの条件下でのテクニックについて書いてみようと思う。なお以下の解説は、現在一般的と思われるフロントにカッティングブレーキを装着、リアにLSDもしくはデフロックが入っているトライアルマシンを想定している。

いつも小回りターンが決まるとは限らない
タイトスポットでくるりと小回り旋回を決める、というのがカッティングブレーキの得意技だと思ってる人が多いと思う。でも現実はちょっと違う。たいていの人は「トランスファーを2WDにし、舵を大きく切り込み、イン側にカッティングブレーキを強くかけて、一気にパワーオン」という操作をするけど、これだと思ったとおりにはアクセルターンが決まらない。まあ狙ったラインに乗せられるのは、いいいところ5回に1回くらい。大抵はリアがその場で空転して潜ってしまってスライドが始まらなかったり、強アンダーステアを起こしてフロントが流れたり、かなりラインを外れてからテールスライドが始まるというような予想外のタイミングになったりする。これに悩む人は多いはず。

それはなぜか?カッティングブレーキはフロント片輪のブレーキによる支持力を利用して、リア駆動時にフロント片輪を中心とする回転モーメントを造り出すという仕組みによって、リアスライドを誘発し小回り旋回を可能にする。そのため前述の条件下では、リアがスライドを開始するような旋回モーメントを得るためには「ブレーキを掛けているタイヤのグリップが、駆動するリア(2輪)のトラクションを上回る状態」でなくてはならない。
この条件を満たすのはなかなか難しい。当然急激なクラッチミートでリアのグリップを失わせる操作をするわけだが、実はタイヤのグリップは激しく空転していても、空転無しの時の7割くらいはトラクションを発生しているので、リア2輪の出すトラクションの和はフロント片輪のブレーキによる支持力を容易に上回ってしまうからだ。つまりフロントは駆動力で前に押し出されてしまう。
もちろんフロントを押し出しつつもアンバランスな片輪ブレーキ状態だから、小さいながらも旋回モーメントは発生する。だからリアが十分に空転していれば車体はゆっくりとスピン運動を始める。ただしフロントの逃げが大きかったり、駆動するリアタイヤが空転で潜ったりする(横滑りしにくくなる)と、小さな旋回モーメントは用をなさず、むなしいアンダーステアになってしまうわけだ。
じゃあ上手く小回りさせるにはどうするか?
ここまでの説明でだいたい想像はついているだろう。まずカッティングブレーキを効かせるタイヤのグリップ状態を改善する。つまり微小な路面の凹みや段差など、支持力を高められる条件が得られる位置を選ぶのだ。次にリアタイヤ位置には潜りにくい路面を選んでやる。この最初のきっかけさえ上手く作れば、一旦横滑りが始まれば、旋回モーメントは自然に大きくなる。
そうはいっても、競技ではそんなに路面が選べるわけではない。そこで、実戦では「クルマを止めないで」旋回のきっかけを作るテクニックが必要になる。実は極低速でも、クルマが旋回中には意外に大きな遠心力が発生しているのだ。空転によって横方向のグリップを失ったリアは、この小さな遠心力の助けで容易にスライドを開始することができる。
クルマを止めない(微速を維持)で、ハンドル操作によってターンの半分くらいまで回り込み、そこでカッティングブレーキとパワーオンを掛ける。すると遠心力と旋回モーメントの両方をつかってスピンを誘発できるわけだ。またクルマを止めていないので、空転で潜ることが少なく、引っかかって横滑りが邪魔される可能性も低くなる。

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