構造はどうなってるの?
キャプスタンウインチの中身は上の図のようになっている。これはランドローバー純正オプションに採用されていたフェアリー製キャプスタンウインチ。同じものは古い軍用ジープでも使われていた。(時系列的にはそちらが先なのだ)シリーズ・ランドローバーの初期にはエアロパーツ社製が採用されていたが、キャプスタン部分の意匠は異なるが、機構部は同じと言って良いくらい瓜ふたつ。図は左奥が前で、右手前がエンジン側だ。機械式PTO駆動なのだが、いわゆるPTOギアボックス経由ではなく、動力はエンジンのクランクシャフト前方から得ている。
その辺がどうなってるかというと、ちょっと図では判りにくいが、エンジン始動用のスターティング・クランクを接続するフランジ部分にPTOシャフトを繋いで直接動力を得る仕組みだ。その部分にドッグクラッチがあってオン・オフを切り替える。減速はウォームギアセットで行う。ウォームギア(インプット側)とウォームホイール(キャプスタン側)には非可逆性(ウォームギアから回せるが、ウォームホイールからは回せないということ)があるので、これがブレーキの役割も果たす。
過大な入力からウインチや車自体を守る安全装置は2組のシアーピンが担う。ひとつは普通のPTOウインチ同様インプットシャフト上にあり、これがオーバーロード時に破断してウインチを停止する。もうひとつはキャプスタンに備わっていて、車やウインチ自体を破壊するような、さらに大きな力が掛かったときに破断してキャプスタンをフリーにする。
使用法と注意事項
フェアリード(というかガイドバー)にロープを通し、キャプスタンの下から3巻きほど反時計回り(=キャプスタンウインチの回転方向)に巻く。ウインチの横に立ってテール(ウインチから出てくる余った部分のロープのこと)を引いて遊びをとっておく。なおこれはエンジン停止でドッグクラッチは繋がった状態で行う。(ドッグクラッチにはシンクロがないから)
エンジンを始動するとキャプスタンは回り始めるが、この状態ではまだロープはキャプスタン上を滑って空転するだけ。おもむろにテール(ロープ)を引いてテンションを掛けてやると、キャプスタンとロープの間に強い巻きつき摩擦が生じて、ロープの巻き取り(正確には引き込み)が始まる。巻きつき摩擦はテールにホンの小さなテンションを与えるだけで非常に大きな摩擦力を発揮するので、大きな荷重でも楽々引っ張れる。摩擦が足りずロープが滑るようなら、一旦エンジンを停止しキャプスタンへの巻き数をひと巻き増やせば事足りる。
巻き取りを停止する時にはテールを引く手を緩めてやる。これでキャプスタンとロープは空転状態に戻る。緩めた状態での摩擦は小さいので、滑っていても過熱の心配はない。また吊り上げ作業のようにブレーキ力が必要な(荷重を保持する必要のある)停止を行うときには、テールにテンションを掛けたまま、ドッグクラッチを切る。こうすればウォームの非可逆性によって荷重は保持される。ドッグクラッチはバインディングが掛かっていても、動力を切る方向への作動は可能なように作られているので、こういう使い方ができるわけだ。再度巻き取る場合には、エンジンを一旦停止し、最初の手順を踏まなくてはならない。
ワイヤーを使用するとキャプスタンの消耗が激しくなるが、前述のとおり使用自体は可能。ワイヤーはロープよりも摩擦が小さいので、あらかじめキャプスタンへの巻き数を増やしてやる必要がある。なおキャプスタンウインチに最適なロープはポリエステル製のロープだ。伸びが非常に少なく(ウインチングには重要な要素)、吸水性がない(ロープは濡れると強度が低下する。また低温時には凍る。)からだ。ナイロン系は良く伸びるし摩擦熱に弱いのでウインチングには不適切。昔ながらのマニラ麻などの天然素材は、嵩張るし水にも弱いが、ナイロン系よりは良い。もともとこういう素材のロープしかない時代にキャプスタンウインチは生まれたので、相性が悪いわけはないが。
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