2010年5月16日日曜日

シンセティックロープ PART 1




このところ何回かシンセティックロープについて質問されたので、その説明をまとめてみた。最近ウインチにシンセティックロープを使う人が増えてきた。ワイヤーよりも軽量だし、しなやかで扱いやすいところが好評を呼んでいる。というか、本場のロッククローリング・シーンで有力選手達がシンセティックロープを使っているせいで、流行し始めたようだ。ま、カタチから入るのは悪いことじゃない。それも趣味の楽しみ方だから。でも効能をお勉強しておくと、友達との茶飲み話がもっと楽しくなると思う。
シンセティックロープってなに?
鋼線でできたワイヤーロープ(ケーブル)に対して、合成繊維(synthetic fiber)で造られてるロープがシンセティックロープ。合成繊維のロープは大まかにナイロン系とポリエチレン系に分類できる。ロープの素材別の特性は以下の表のようなもの。

ロープ素材の比較
素材 比重 引っ張り強度 伸び 摩擦強度 扱いやすさ 価格
ナイロン 1.14 強い 伸びやすい 普通 容易 安い
ポリエチレン 0.97 非常に強い 伸びない 弱い 容易 高い
スチールワイヤー 7.85 強い 伸びない 強い 普通

ウインチロープはポリエチレン製
このうちウインチロープとして使われるのはポリエチレン系のもの。その理由はポリエチレンはナイロンよりも大きな引っ張り強度があり、かつ伸びが非常に少ないから。ナイロンもポリエチレンもポリアミドと総称されるポリマーで、分子を構成する要素(原子)は変わらない。ポリエチレンとナイロンの何が違うのか?というと、分子を結合する構造に違いがある。化学の話はやっかいなのでさらりと説明したい。ナイロンは脂肪族骨格、ポリエチレンは芳香族骨格という結合に特徴があり、これが性質の違いを生む。乱暴な言い方になるが、木枠を組んだときを想像して欲しい。枠に梁や筋交いを入れると強度が増す。骨格(結合構造)が違うと強度が変わるというのは、そういうこと。
いろんな製品があるのだけれど…
芳香族骨格を持つポリエチレンが優れた強度特性を持つわけだが、この強力な芳香族骨格だけで結合しているポリマーをアラミドという。アラミドの代表格は有名なケブラー(米デュポン社の商標)で、防弾チョッキにも使われる強い素材。同じ構造のアラミドがいくつものメーカーで製造されている。ウインチロープなどに使われる素材だと、耐摩擦性や耐熱性を始めとする特性をファインチューンするため元の(ケブラーなどの)アラミドに他の成分を共重合させたものもある。
ウインチロープの販売サイトなどで、「製造過程で熱処理と引っ張りを加えて伸びをとってある」なんてわざわざ書いてある場合は、たいていは後者の製法で造られたもの。でも「伸びをとってある」ってのはピンとこない話。なぜならケブラーなどのアラミドは液晶ポリマーなので(構造上伸びないから)、このプロセスは必要ない。他の成分を共重合させてファインチューンされる場合には液晶構造のポリマーではないため、その場合には延伸と熱処理で構造を最適化(つまり伸ばしておく)する必要があるということ。用途にあったファインチューンは意義があるのだが、そうでない他の製品が「伸びをとってない」手抜き商品かのような記述はどうかと思う。
話が長くなったので、以下はPART 2に書きます。PART 2 ではシンセティックロープの選び方や使い方を紹介します。

5 件のコメント:

  1. 関根 紳雄2010年5月17日 11:39

    ジムニーが愛車なので収納に便利そうですね。
    早速注文しました。
    その他ロープ用に小道具をそろえないと
    またまたオフロードが楽しみになってきた様です。
    パート2はきっとリアリテイー溢れるないようなんだろうなあ
    楽しみです。

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  2. ウインチケーブルの替わりに使う人が多いのですが、ウインチなしでのウインチングにもシンセティックロープは威力を発揮しますよね。そういう使い方、小道具も紹介していこうと思います。ご協力、よろしく!

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  3. マスタープルのシンセティックロープ、スーパーラインXDがもうじき入荷します。分子構造体の四方山話も面白いです!
    化学はほとんどわかってませんが、、、iPad&iPhoen appのThe Elementsを購入してみました。楽しく勉強?出来るのかなと思います。
    http://periodictable.com/

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  4. スーパーラインXDはこの種のシンセティックロープの中で最高級品のひとつですね。高強度のダイニーマ(素材の商標)芯線を編み被覆で保護(ブレイデッド)するというコストの掛かる構造。重作業用のメインラインとして頼りになりそうです。でも軽作業にはもっとお安いヤツでもいいかな。取材・撮影用には、もちろん最高だと思います。

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  5. 登山の懸垂下降でカラビナを使ってぶら下がり降りるのには向いていませんか

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