2010年5月17日月曜日

スポーティング・トライアル


メジャーとは言えない競技なので、ご存じの方はあまりいないと思うが、スポーティング・トライアルは英国やアイルランドで楽しまれているモータースポーツ。2輪駆動の自動車でオフロードを走るトライアル形式の競技で、由緒正しい紳士のクラブスポーツ。競技者のいでたちも、レーシングスーツなんか着ちゃいないし、野暮なヘルメットも被っちゃいないところがいかにも英国風。おっと、足元はもちろん長靴です。Country Gentlemenの伝統ですな。
スポーティング・トライアルの起源は、世に自動車が普及し始めた頃にも遡る。ゆえに競技の車両規則も伝統に則ったものだ。2シーターのロードスタースタイルで2輪駆動、タイヤはクラシックサイズ(細い!)のオンロードタイヤ(!)、デフロックなど差動制限装置はなし。要は古き良き時代の小型スポーツカーのカタチ。マーカーを縫って競うのでカッティングブレーキ(実体は左右独立のハンドブレーキだ)は認められている。そんなんじゃたいしてオフロードは走らんだろうと思いきや、これが4駆はだしの走破性を見せるのだ。まずはYouTubeの動画を見て欲しい。


このビデオはあのBBCの人気番組Top Gearで1992年にon airされたもの。伝統のランズエンド(地名)トライアルを取材して制作されている。スポーティングトライアル用のキットカー(公道走行可)の試乗に始まり、トライアルの歴史、マシンの特徴、有名選手の紹介など盛り沢山な内容。
メカニカル・トラクションとはこういうことだ、と言わんばかりに、極細オンロードタイヤで見事に滑りやすい路面を走り抜ける。見てくれはクラシックだが、FRレイアウトのシャシーとサスペンションは長い歴史に培われた優れたジオメトリー設計だし、エンジンは低重心マウント、加えてリア寄り重量配分とくれば、トラクションが悪かろうはずがない。
起伏の強い路面を2WDで走り切る秘密のひとつがフロントのビームサス。これが非常に深いアーティキュレーションを発揮してくれるおかげで、左右のリアタイヤ接地荷重を均等に保ってくれるのだ。そういえば道路整備が進む以前の時代、自動車は(特別な高級車は別で、早くからオンロード向きのサスだった)みんなこういうサスを使っていた。接地荷重の均等化がトラクションを増すというセオリーは昔から知られていたわけだ。
関連動画を探して見てもらえば、このスポーツがいかに楽しいかが判ると思う。老夫婦が競技に参加していたり、大のオトナが小さなコックピットの中で体重移動してる姿はなんだか微笑ましい。こういう競技が廃れることなく継承さているところはさすが英国。オフロードの世界では「英国人は泥を走るのがうまい」と定評があるが、なるほどこういう歴史と伝統がものをいってるわけだ。

2 件のコメント:

  1. なかなか興味をそそる動画ですね!
    トラクションを感じるにはこんな走りも必要ですね。
    今はトラデバで勝手にやってもらっていますがこんな忙しい事を自動的にこなすLSDはすばらしい!
    エアーロッカーもカッテイングブレーキも使い方次第という事ですかね。
    あのドライバーは右手で操作しているのはトラクションが分かっているのですかね?
    初心に戻ってまた遊んでみます!
    そそるコメント楽しみにしてます!!!

    返信削除
  2. こんちわ、関根さん。早速見てくれたんですね。
    そう言えば昔ジーピングでよくやりましたよね、荷台の上に乗ってクルマを揺するとか…。ああいう経験がトラクションを理解するのに役立ってたって気がします。あの時代LSDも売ってなかったし。
    そのドライバー氏が解説してる中に「ここでブ〜ンと回しておいて、ガンとブレーキ掛けるんだ!」って台詞がありました。英国にもカッティングブレーキを「漕ぐ」人がいるんですね。(笑)
    あのカッティングブレーキ、英国ではFiddle Brakeていうんです。フィドルというは「指先でちゃちゃっとやる」というような意味ですが、口語だと「ズル」とか「インチキ」って意味で使われます。こういう表現、オフローダーって世界共通ですね。

    返信削除