ランドローバーマガジンの読者なら、ランドローバーのメカニズムや歴史について書いた小生の記事をご覧になったこともあると思う。執筆していていつも感じるのは、ちょっとしたトピックの解説をするにも「あ~動画でもあれば一目瞭然なのに…」ということ。そこで小生の筆の至らないところを補う映像はないものか?とYouTubeで探してみた。
で、いくつか見つけたので紹介しようと思います。今回とりあげるのはシリーズ・ランドローバーのプロモーション映像で、タイトルは Land Rover - All in a Day's Work。All in a Day's Workとは意訳すると、「どんな仕事も朝飯前」というようなこと。ランドローバーが「万能なワークホース」であることを目指して造られたという事実がよく判る。実に様々なオプションが紹介されているので、メカ好きなら必見。古い映像なので、埋め込み動画のあとに、タイムコードに沿って簡単な解説をつけておきました。動画は2部構成です。
Part 1 of 2
1:00 最初に登場するのはアーティキュレーテッド・ペイロードキャリアー、つまり荷台部分にカプラーソケットを備えた大型車と同じようなセミトレーラーです。牽引車(ランドローバー)側に大きな荷重が掛かっても大丈夫、というタイプ。作業着がツナギじゃなくてコート型なのが英国らしいところ。
2:00 次はトレーラーウインチ。トレーラーに機械式ウインチを搭載し、リアPTOから伸びたプロペラシャフトでウインチを動かす強力なもの。ランドローバーのシャシーにストレスを掛けることなくウインチを動かせる。ちっとも現場労働者風でない若者が作業してるところが笑える。
2:50 モバイル・ルブリケーション(屋外での給油脂)サービス用の架装。これはPTOではなく汎用エンジンでエアコンプレッサーを動かしている。オイルディスペンサーもグリスガンも空気圧を利用。
3:50 ファイヤーテンダー(消防車)仕様はフロントパワーテイクオフでポンプを動かす。高圧ポンプは取り扱いに専門知識が必要なせいか、ポンプを扱う人だけがツナギを着てる。現代なら手袋せずに使う人はいないけど…まあ、時代が違うから。
4:50 家畜用の柵。これも純正が存在した!でもこんないでたちで家畜の積み込みをする人はいないでしょう。いかに英国のカントリー・ジェントルマンでもね。(笑)
5:35 ファーティライザー・ディストリビューター、つまり肥料の散布機でリアPTOで駆動される。余談になるが、50年代以降の農業では世界的に窒素肥料が大量に使われるようになった。窒素肥料で収穫は増えたが、水質汚染という新しい社会問題も引き起こした。
5:55 ムアリング・アタッチメントは草刈り機。センターPTOで油圧ポンプを回し、油圧式の3点リンク(トラクターと同じアタッチメントの取り付け装置)を使ってアタッチメント(リアPTOで駆動される)を昇降する。
6:15 スプレーヤー。これは説明不要だろう。センターPTOのエアポンプの圧力で散水する。
7:30 フロントマウントの油圧式ウインチ。ケーブルにそのままフックをかけてしまうところに時代を感じる。昔は良くも悪くも「おおらか」だったのだ。
8:10 これはとても珍しいパワードトレーラー。リアPTOでトレーラーのアクスルを駆動するもので、これを使うと6輪駆動になる。元々はオフロードで重い野砲を引く軍用に開発されたが、一時期民生用としてもランドローバーの純正オプションとする計画だった。これについては、また別の機会にエピソードを紹介したい。
8:58 再び消防車。こちらはリアPTO駆動のより強力なポンプと水タンクを搭載したタイプ。
Part 2 of 2
0:00 荷台に搭載された大型エアポンプ。これはリアPTOに装着されたベルトドライブ・アタッチメントによってベルト駆動される。
0:48 ロータリー式のムア(草刈り機)。ロータリー式は芝などをクリーンカットするのに使う。これはタダのトレーラー式でタイヤが回るとムアも回る仕組み。
1:00 リフトトップ式キャンピングカー架装。大戦後の欧州ではキャンピングカーブームが始まっていた。
1:40 放送車(といっても放映の方)。発電器やスクリーンを架装してあり、野外シアターになるわけだ。そう、英国でテレビが本格普及する以前の映像なのだ。蛇足ながら、映写機の箱がふたつ見えるが、これはフィルム時代には長編物は2基目の映写機に続きをスタンバイしておいて映像を切り替える方法が一般的だったから。
2:49 油圧リフト(高所作業車)架装車。PTO駆動の電気溶接機を搭載したランドローバーとのコンビネーションも。当時の機械は嵩張ったので、1台に両方の機能を載せるというのは、まだできなかったようだ。
3:40 再び消防車登場。今度はリアオーバーハングをストレッチされた救急車架装仕様も登場。ランドローバーのソリハル工場には特装ラインもあって、こういう特殊ボディはお手の物だった。
4:40 再びリア搭載のベルト駆動エアコンプレッサー登場。今度はチゼルなどを動かしている。ここで登場した作業は、現代だと多くの専用機械が使われる場面だが、シリーズランドローバーの時代には、まだまだ専用の産業機械は生産されておらず、こういう万能性がおおいに有益だったのだ。
5:21 最後は現代のランドローバーにも継承されているとっても重要な「仕事」、つまり子供を運ぶという機能の紹介。確かにこういう2本足の小さな荷物を運ぶのはステーションワゴンスタイルは合理的。伸び伸びスペースで「荷物」の受けもいいし…。あそうそう、シートベルトやチャイルドシートなんかが登場するのは、もっと後の話だ。
6:45 フィナーレではシリーズ3が丘陵地帯を疾走。7:10あたりで、民生用のフォワード・コントロールが登場する。8:25あたりで、ちょっとしたドラマが…、編集でカットを切り替えて体裁を保ってるけど、このヒルクライムは1トライじゃ登り切れなかったみたい。撮影の舞台裏を想像して、思わずくすりと笑ってしまった。
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紙媒体でできないこと、ウェブの楽しさですよね。
返信削除もっといろいろな素材を楽しみたいものです。
FC+PTOトレーラー、AG-ROVERなどはぜひとも!
FCやパワードトレーラーについて書きたいことは沢山ありますが、著作権の関係で、このBlogでの使用が可能な画像を用意するのが難しいのです。ですが、いずれ記事としてみたいですね。ポータルアクスルの件も同様です。
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