2010年6月19日土曜日

オフロードの走行力学 等速協調駆動編

4輪駆動車が優れた走破性を発揮できる理由にはいくつかの要素があるのだが、中でもオフロードドライビングテクニックに深く関わっているのが「等速協調駆動」という仕組みだ。OTCで教えるドラテク実技の多くは、この等速協調駆動のメリットを最大限活用するための手法だといっても過言ではない。だからこの仕組みを理解し、走行中にいつもそれを意識することが大切だ。
等速協調駆動とは?
パートタイム4WD(センターデフをロックできるフルタイムも)は4WD走行時に前後アクスルが直結される。よって前後アクスルは常時等速を保って駆動される。そのため一方のアクスルが滑りやすい路面にあっても、回転速度はグリップのある側のアクスルと同一のままに保たれるので、トラクションを確保しやすい。つまり前後アクスルの回転はいつも等速になるように互いに干渉し合っているわけだ。これを等速協調駆動という。
平らな路面でもこの特性はトラクション面で有利だが、本領を発揮するのは起伏のある路面だ。例えばフロントアクスルが段差に乗り上げる場合、段差が大きく急(垂直段差のように)であると、そのアクスル単体ではグリップを得られない。ところが前後アクスルが直結駆動される4WDでは、リアアクスルの駆動力によって乗り上げ側のフロントアクスルが押されるので、それによって段差に押しつけられてグリップを得ることが可能になる。この仕組みで等速協調駆動される前後アクスルは、互いに押したり引いたりし合いながら等速で回転することによって、不整地でも単に4輪に駆動力が分散されている以上のトラクションを発揮することができるのだ。
等速協調駆動のトルク配分効果
等速協調駆動のためには、前後アクスルは直結されている必要があるので、前後駆動力配分は50対50だ。しかし直結されているおかげで一方が滑りやすい路面にあっても、駆動力がそちらのアクスル側の空転というカタチで逃げていくことはない。その時、エンジンの発生する力はグリップのある側のアクスルに伝達されるのだ。これはパッシブ(受動的)ではあるものの非常に反応の良い負荷に応じたトルク配分が行われるということを意味する。負荷に見合った前後トルク配分はすなわち効率の良いトラクションを意味する。
等速協調駆動を生かす走りとは?
一方のアクスルのみが空転することを許さない等速協調駆動だが、現実のオフロードでは前後アクスルに備わるデフの働きに注意しなくてはならない。前後アクスルは等速でも、デフの働きによって左右のホイールは違った速度で回転できてしまうからだ。だから1輪が滑りやすい状態(路面が滑る、あるいは接地荷重が小さいなど)に陥らないドライビングが必要になる。
図のように片輪が滑りやすい場合、その逆側ホイールには「滑りやすい側で発生できる駆動力と同じ駆動力」しか伝達できない。そのため1輪が完全空転(宙に浮いた状態など)すれば逆側ホイールの駆動力もゼロになる。その場合にももう一方のアクスルに全ての駆動力が伝えられるというのは等速協調駆動のメリットだが、急激に2倍の駆動が掛かるのでそちらのアクスルでも駆動がグリップを上回り空転を誘発しやすい。またこの場合等速協調駆動のメリットである「押したり引いたり」効果も得られなくなる。
こういう事態を回避するには、極力4輪を均等に接地させるラインを選ぶのが得策。モーグル地形など、ホイールが浮き気味になる条件では、伸び側ホイールを「僅かでも接地させておく」ラインを通る工夫が、等速協調駆動のメリットを失わないために重要だ。1輪が浮くことによって急激な前後トルク配分変化が起きると、そのショックで浮いたホイールの対角線上にあるホイールの空転を生じやすい。1輪の浮きを回避できない場合の対処としては、(特に滑りやすい路面では)必要に応じてスロットルを緩め、対角線空転を緩和する必要がある。
また自車のホイールベースとトレッドを熟知しておくことも大切。地形を読んで走行ラインを考える際には、等速協調駆動が損なわれないラインを選ぶわけだ。具体的には対角線上のホイールが同時に滑りやすい路面を通る(または接地荷重が小さくなる、あるいは抵抗が増す)ことを避けることが走破性を高める。「路面を読む」とはそういう意味なのだ。

3 件のコメント:

  1. 関根 紳雄2010年6月19日 12:34

    立て続けアップに驚き!
    前のリギング講座でロープ会社の寄り道をして戻ってきたら
    等速協調駆動になっていて、あれ〜
    初めてご覧になられる方は今日1日、頑張ってください。
    リギング/等速協調駆動そそられる言葉ですね!

    まだ分かりません?問題の「あの道具とは]
    答えは今しばらく黙っていてください。
    頑張ってみます。

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  2. 先ほどはお邪魔しました。またいつも撮影協力ありがとうございます。
    「ある道具」ですけど、お店で他の方と話してるときに、つい答えのひとつを言っちゃいましたね。失礼しました。同じ道具を使うもんですから…つい…。でも方法はアレひとつじゃないんで、引き続き考えてみて下さいね。

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  3. 関根 紳雄2010年6月20日 10:43

    しっかりお勉強しておかなくちゃ!
    なるほど負荷がかかるのをコントロールすればいいわけですね。
    まだ完璧ではないです。ううう・・・
    完全攻略しておかねば、いざそのような状況の時考えているようではいけない。
    「ある道具」「ある方法」・・・

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