2010年6月12日土曜日

都市伝説にご用心! Reverse winch recovery

うっかりしてると信じてしまいそうな都市伝説ってありますよね。よ~く考えれば気づきそうなものなんだけど、語ってる当人がその話を信じ込んでる場合には妙に説得力があって、聞いてる方もつい「そうなんだ」なんて思ってしまう。4駆の世界にもそういう話があるんです。そのひとつがリバース・ウインチリカバリーってやつ。この図のようなリギング(ラインの取り回し)を使って、「ウインチを使って自分の車をバックさせる」というのです。



まあ、以下の動画を見てやって下さい。最初に言っておきますが、この動画で紹介されてるテクニックは、全くの間違いですので、信じちゃダメですよ。


力学的にいうとこのリギング(ワイヤーの取り回し)は閉じた力学系になっていて、何もものを動かすことができないのです。まずは難しい説明はやめて、身近な例でお話ししましょう。早い話があのリギングはトラックに荷物を積むときのロープワーク「南京締め」と同じなんです。つまりものを動かすために引っ張る方法でなく、要は「締めてる」のです。

ロープに南京のカナメを造って、そこにロープを掛けてダブルラインにして引きますよね。端を引くとカナメの部分が手元に近づきながらテンションが増します。このカナメの部分がクルマです。だから確かに少し手前に引くことはできます。しかしこれは、締まる過程の動きに過ぎません。だからロープへのテンションを増やせる範囲でしか引けません。言い換えると、ロープにテンションが加わって伸びる(つまり力を貯める)という状態でしか、カナメ部分を手前に寄せることはできないのです。
結論として、リバースウインチングはほんの少しならクルマを動かせます。しかしそれは、ラインやツリープロテクターが伸びて力を貯められる範囲内の話です。遊びが無くなると止まってしまいます。巻き取るにつれ加速度的にエネルギーは貯まっていきますから、リギングへのストレスはどんどん増し、ウインチやフレームへの負担は巨大なものになります。実際に大きな牽引力を必要とするようなスタック状態でこのリバースウインチングを使うと、クルマは動くことなく、ラインやフックが壊れます。大変に非効率で危険だということは判ってもらえたでしょうか。
Webを検索してみたら、いくつものオフロードスクールで(なんてことだ!)このテクニックを教えていました。人は間違いを犯すものだし、ベテランなんてものはほらを吹くのは常なのだが、こともあろうに科学的根拠のない、しかも危険なことをスクールで教えるとは、とんでもない話です。

6 件のコメント:

  1. 関根 紳雄2010年6月15日 19:13

    よく分かりました。
    私は距離で考えて見ました。
    ウインチの巻き取り距離の半分しか車は動きませんよね。
    その分ストレスがどんどん貯まってしまい非常にキケンですね!
    以前オフロードスピリッツ?だと思いますが車の前方にあるスナッチブロックを車と一緒に動けば言い訳ですよね。
    でもそれってリアリティーがないですよね?
    机の上でいろいろ考えられるのでリギングって面白いですね。
    自分なりにいろいろ科学してみます。
    非常に参考になりました。

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  2. コメントありがとうございます。
    「距離で考える」もよいですね。全てのロープの長さを仮に決めておいて、その長さを足し算します。もしラインを2m巻くことができるとしたら、クルマは後方に約1m下がるはず。で、その時のラインの長さはもとより2m短いわけですけど、1mしか下がらないわけですから、もう1mがどこかに消えてしまいます。これがテンションになるのです。実際はそんなに巻けないと思いますが…。
    リギングは科学的も考える、がOTC流ですよね!

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  3. 関根さんがおっしゃってるのは、ウインチの前につける反転用のプーリーブロックですよね。あれも普通のクルマには装着は難しいですよね。でも、ある道具を用意すると、実はリバースウインチングも不可能ではないんです。そのうち紹介しようと思ってます。

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  4. 関根 紳雄2010年6月17日 10:32

    OTCに向けていろいろ課題があり楽しみです!
    リバースもいいけどその前にウインチの仕組みからですよね!楽しすぎて頭でっかちにならないようにしないと・・・
    リギングの「始めの一歩」は丈夫なフックを取り付けることですね。

    ある道具とは????

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  5. そのとおりですね。「始めの一歩は丈夫なフックを取り付けること」これがなくちゃ始まりません。少々斜めに力が掛かっても大丈夫なヤツだとさらにいいですよね。
    「ある道具」が気になってるようですね(笑)
    ウインチ装着車を使って取材できるときにでも撮影しておこうかな、と思ってるのですが、気になるでしょうから、今度お目にかかるときに説明します。お楽しみに。

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  6. この勘違い都市伝説説明ってまだ訂正しないのですか?

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