エクステンションロープとして使うなら
シンセティックロープはエクステンション(延長)ロープとして使うのに最適だ。なにしろウインチロープと違い熱の問題がない。これまで書いたとおり、高級な保護レイヤーを備えたロープが最もヘビーデューティなのはこの場合でも同じ。ただしドラムに巻き取られるわけではないので砂や泥を噛み込んだまま強い力が掛かる心配は少ないので、かならずしも高価なブレイデッド・ロープを選ぶ必要性はない。またブレイデッドでない普通のタイプはとても軽量(水に浮く比重)で、手触りもしなやかで取り扱いが楽だ。また普通タイプだと価格的にかなりお求めやすいのも魅力。エクステンションロープの場合、使用するクルマの重量の3倍くらいの耐荷重性があるとオールマイティに使える。
ウインチロープの場合、耐荷重レーティングは、想定牽引荷重の1.5倍を目安に
強力なシンセティックロープも強いのは引っ張り荷重に対してであり、剪断力のかかる状況には弱い。したがって鋭利な角(それがたとえ小さな突起でもだ)や急激な曲げ(ちいさなRでの曲げ)や、局部的にロープを潰す圧力が集中する「結び」などには細心の注意が必要。ロープの端末はフックやUシャックルに接続する部分で局部的なストレスが掛かりやすい。荷重レーティングの高いシンセティックロープでは、ここに大きな荷重がかかってもロープに不自然な潰れが生じないように、頑丈なシンブル(金属製の端末の補強)が装着されていなければならない。またスナッチブロックの形状にも注意が必要。プーリー形状にシャープな角はないか、捻れがかかった状態でロープとプーリープレートが接触しないか、プレートの端は角張っていないか、プーリーは滑らかに回るか、プーリー溝に傷はないかなど充分にチェックしておきたい。新しいスナッチブロックを購入するなら、シンセティックロープ対応を謳った製品を選ぶとよいだろう。日本で手に入る製品だとARB製の9000ウルトラライトというモデルがとてもシンセティックロープ向きのデザインだ。
ロープ端末処理とスナッチブロックの形状に注意
番号の部分にシャープなエッジや大きな隙間がないことが必要
信頼できるロープ端末の処理
パラレル・グリッピング・バイス
エクステンションロープとスナッチブロックはウインチ無しでも活躍の場が多い。ウインチがなくともクルマで引っ張れば良いのだ。ロープとスナッチブロックがあれば、スナッチストラップが使えない状況でさえ安全かつ簡単にレスキューできる。こういう場合、スタック車とレスキュー車の位置関係に合わせてロープの長さを調節する必要がある。そこで役立つのがパラレル・グリッピング・バイスだ。これはいわゆるワイヤークリップのように機能するのだが、こちらはワイヤーだけでなくシンセティックロープにも「ダメージを与えることなく」使える。写真のものは筆者が永年愛用している製品と同じもので、近年インプスさんが取り扱いを始めた。類似品もあるがシンセティックロープにも使えるタイプはこれだけ。こういう用途には登山用にもロープを傷めない良い製品があるのだが、そちらは残念ながらクルマに使えるような強度で設計されていない。
パラレル・グリッピング・バイス
(別名シカゴ・グリップ)
軽くて強力なシンセティックロープはスタック・レスキューのスタイルを変える新時代の装備。ウインチ無しでのウインチング?に活躍するのはもちろん、ワイヤーでは不可能だった新しい使い方も色々ある。そういうハウツーについても、今後紹介していこうと思うのでお楽しみに。
取材協力 インプス 0423-70-3460
*このページに写真掲載されている製品は全てインプスで購入できます。
いやあ~3連発ですね!
返信削除これからじっくり読みます。
何回読めば理解できるのでしょうか?
それも楽しみです。
今回入荷したシンセティックロープは少々硬いものでした。
次回はもう少し柔らかい物を選んでみます。
またIMPSご紹介ありがとうございました。
さあ~読むぞ!!
いつもコメントありがとうございます。このところ記事の更新を怠っていたので、手元に書きかけの山ができてしまいました。少しずつ出していくようにします。
返信削除先日はお疲れさまでした。
返信削除その折りに出ていたロープの話、楽しませて戴きました。
ワタシのように、特に4駆がホビーではない人間でも
楽しめる内容に感服です。この次、お会いしたときに、
また色々と御質問するかも? です。
「4駆な人」じゃない小野さんにお褒めいただくとは光栄です。先日は酔っぱらいにお付き合いいただき、ありがとうございました。ご質問はもちろんOKですが、酔っぱらってからの話だと信憑性が無いかも…(笑)
返信削除はじめまして。「シンセティック・ロープ」について調べていたところ、とても助けになるブログに行き着いたという次第です。私は無謀にも「WARNウィンチXT30」を海の作業(岩牡蠣養殖)のために購入しました。
返信削除そこでロープの端末処理についてお尋ねです。
ステンレス・シンブル(ロープコース)を通して、サツマ編みでの処理を考えていましたが、貴殿の方法もとても頑丈に末端処理をされているので、そのパーツと手順をご教授いただければまことに幸いです。
取り急ぎお尋ねまで。
石井さん、コメントありがとうございます。
返信削除ちょっと家を空けておりましたのでお返事遅くなりました。
ロープの端末処理ですが、普通のシンセティックロープなら、石井さんが書いておられる方法が良いと思います。
なぜか?という説明は少し長くなりそうなので、今夜にでも書かせていただきます。
少しお待ち下さい。
石井さん、お待たせしました。
返信削除当ブログの画像にある端末処理に使ってるシンブルは、以下のURLで。
http://www.masterpull.com/cpage.cfm?cpid=514
これはチューブシンブルです。残念ながら海向きのステンレス製品はないようです。
具体的なロープ端末の処理は、以下のURLに画像を置きましたので、ご覧になって下さい。
http://www.flickr.com/photos/m_takehira/sets/72157625131855184/
夜の室内で撮ったので、お見苦しいところは、ご容赦を。
ごく普通の投げ縄結びです。
なお、この端末処理は固いブレイデッドロープとチューブシンブルの組み合わせでないと、実用的でありません。
普通のしなやかなシンセティックロープで、とお考えでしたら、石井さんが考えておられるように、普通のシンブル+返し組み(薩摩編みのような)が合理的だと思います。
石井様
返信削除この方法ですが、端末は投げ縄結びですので、シンブルがチューブタイプ(オープンでない構造)でないと、ロープの一部に大きなストレスが掛かってしまいます。
当ブログ内で使用した画像のロープは、非常に固くブレイドされた特殊なシンセティックロープのものでして、そのロープの場合、ブレイドを剝いてコアを返し組するということができないのです。そのかわりに、とても潰れにくいロープなので、こういう方法で端末処理しているのです。
この情報がお役に立てば幸いです。
本日(12/13)、お尋ねしていたことを思い出して、ブログをチェックしてご返事を確認させていただいた次第です。遅ればせながら、ご丁寧な解説をまことに有難うございました。石井千里
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