2010年6月5日土曜日

シンセティックロープ PART 2

ハイスペックな2重構造のシンセティックロープの例
シンセティックロープの選び方
オフロード用に限ってもシンセティックロープとして販売されているロープにはいくつかの素材がある。前回書いたように、伸びないことが求められる用途では、どれも基本的に芳香族骨格ベースのポリエチレン系ロープなので素材の特性は同じようなものだが、完成品のロープとして販売される状態では、大別してふたつのタイプがある。ひとつは非常にしなやかで柔らかく曲がるもので、もうひとつはぎゅっと締まった手応えで、きついRでは曲がらないタイプのものだ。両者は手に持ったときの印象も随分違うので、始めてシンセティックロープを購入しようとする時、その性格の違いを理解しておかないと、どちらを選べば良いのか迷ってしまうものだ。
一般的なシンセティックロープの例
代表的なふたつの構造の違い
シンセティックロープは、素材としては非常にしなやかで柔らかく曲がる。なのになぜ曲がりにくいロープがあるのか?この外観・手触りの違いは、素材ではなくロープの構造(造り方)からくるもの。オフロード用シンセティックロープは8~12本の撚り線の束(ストランドという)を編んで造られている。編んで造られたロープ(ブレイデッド・ロープという)は昔ながらの撚って造られたロープよりも構造的に強度が高く、取り扱う上でロープが絡んだりキンク(折れ癖)を起こしにくい。また大きな力で引っ張ったときにも撚りが戻って捻れてしまうことがない。そのため現代のロープはほとんどこのブレイデッド・ロープになった。むしろ今ではわざわざブレイデッド・ロープという呼び方はしなくなったほど。シンセティックロープも多くはこの方式だけれど、特にブレイデッド・ロープという表記をされることは少ない。
そんな時代になったのに、曲がりにくいタイプのロープの場合は、わざわざブレイデッド・ロープという表記になっていることが多い。これは正しくはブレイデッドでなくカーンマントルと呼ばれる構造で、ロープは2層構造でできているのだ。内部に主要な強度を担うストランド(これをカーンという)があり、その外側を保護用のブレイデッド・レイヤー(これをマントルという)が包んでいる。これは編んであるというより織物レベルの密な層で、これが内部のストランドを強く締め込んでいるため、曲がりにくい特性になっている。このマントルがあるおかげで、編み構造よりも内部(カーン)の素材を真っ直ぐに配置できるので、普通のシンセティックロープよりも一層引っ張り強度限界を高められ、より伸びにくい特性にもなる。更にこの締め付ける構造のおかげで引っ張り強度限界付近の高負荷が続く場合にも、ストランドを構成するファイバー同士がスリップ(これをクリープといい、安価なシンセティックロープの弱点だ)することなく安定した性能を発揮できる。ロープ外側の保護層になるマントルは紫外線(ポリエステルはこれに弱い)や摩擦や熱に強い素材が使われ、また密な織りによって砂などを噛み込んでしまうことがないようになっている。要するに曲がりにくいタイプは高級スペックと言うことだ。
ふたつのタイプを比較すると
もちろん通常のソフトなタイプでもスチールケーブルよりも引っ張り強度は大きい。さらに水に浮くほど比重が軽く、簡単に結び目を造れる扱いやすさを兼ね備える。結べると言うことは、ロープワークの知識のあるユーザーにとっては、色々な場面で応用が利くという強みがある。前述の高級品も非常に軽いが、高密度で複雑な構造になっているので、こちらは水には浮かない程度の重さ。また高級品は固いので結ぶのは難しく、ロープワークには少し工夫が必要。(これについては、また別の機会に書きます。私のオフロードスクールでも教えてますけど。)使い勝手ということになると、高級品はほぼワイヤーに近いラフな扱いにも耐える。(もちろんプロテクター使用を推奨するが)一方、通常のソフトなタイプは摩擦に弱く擦れて傷つきやすいのだが、コーデュラナイロン製のローププロテクターを併用すればOKだ。紫外線対策は、通常のソフトなタイプの場合、素材をポリウレタンなどでコーティングすることで対応している。要約すれば、価格が比較的安くて、軽量で、ソフトで扱いやすいのが普通のシンセティックロープであり、少し固いが頑丈で圧倒的な強度を誇るのが高級品ということ。どちらの場合もロープ購入時にはローププロテクター(アブレーション・スリーブともいう)も一緒に買っておくことを強くお勧めする。











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