2010年8月4日水曜日

ハンドルの振れ(Steering wobble)PART 1



赤丸をつけたベアリングが「ハンドルの振れ」と関わりが深い。ちなみにこの画像はあのMBです。
インプスさんのブログ「ハートに火をつけて」に「ハンドルの振れ」についての話題が書かれている。確かにこれはオフローダーなら多かれ少なかれ出くわすお馴染みの悩みの種だ。経時劣化によるガタが主な原因だが、乗用車じゃよほど傷んだクルマでないと経験することはない。なぜクロカン車(特にリジッド車)はハンドルの振れに悩まされるのか?それには大きなタイヤ、重いバネ下重量というオフロードカーならではの要素が影響している。
多分多くの読者の関心事だと思うので、何回かにわけて「ハンドルの振れ」についてお話ししようと思う。「今、俺のハンドルはウォブルを起こして困ってるんだ」という方もいるかもしれないので、まず今回は、話の全体像がどんなものか、ということを書き出しておこう。

誘因
  1. 経時変化による各部品の摩耗や損傷(いわゆるガタ)
  2. 大径あるいは幅広なオーバーサイズタイヤ
  3. 標準と大幅に異なるロードレンジのタイヤ
  4. 低品質のタイヤ(芯円度が低い、重量分布が不均一、構造品質が低いなど)
  5. サスペンション等の改造による不適切なアライメントやジオメトリー
  6. ホイールバランス不良(ホイールの損傷や歪みも)
  7. タイヤの偏摩耗

原因
  1. ハブベアリングの摩耗
  2. キングピンベアリングの摩耗
  3. 不適正なベアリングプリロード(ハブおよびキングピン部)
  4. ステアリングリンケージのガタ(特にロッドエンド)

修理
  1. ベアリング交換(ハブとキングピンの両方)
  2. プリロード調整(ナックルを回転させるための力が適正値になるように)
  3. ガタの多いロッドエンドは交換する

対策
  1. タイヤ交換(新品に交換、またはタイヤサイズや品質を見直す)
  2. 正しいアライメントおよびジオメトリーに直す
  3. ガタやプリロードの定期的な点検と給脂
  4. ダイナミックバランサーの装着


とまあこんな内容になるのですが、各項目の詳細は次回以降順次解説します。

5 件のコメント:

  1. お世話になっております。
    普段行っている作業がこうして文章になると、沢山の項目を行っているのだなあ〜と自分でも改めて思います。
    作業効率はひとつひとつの蓄積によって「体得」していますが、いざ言葉にすると、、、もっとも難しい作業です。
    メーカサービスマニュアルもとても参考にはなるのですが、的確には書かれていないケースが多いです。
    メーカさんは追補という形で対処してはいますが、、、
    オフロードカーの整備は一気にシビアコンディションになるような、作業者も一気にシビアコンディション整備態勢に入らなければならないと思います。

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  2. こんにちわ。
    昔は事あるごとにホイールを揺すってハブのガタチェックするのが、オフローダーの常識でしたよね。するとだんだん感覚が研ぎ澄まされてきて、極小さなガタにも気づくようになる。
    ところで、ジムニーのキングピンベアリングのプリロード調整って、シム式だし、キングピンのフランジ面はパッキン塗るから、かなりKKDが要求されますよね。ナックルアームをバネ計りで引くってことだけじゃ上手くいかない。「少し重めで、かつ途中で重さが変わらないこと」ってことの方が大事。シムが決まっても液体パッキンを塗った後でどの程度プリロードが変わるかを予想しなくちゃいけない。こういうのはメカニックの腕にかかってるわけですね。

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  3. メカニックによって作業の具合が異なりますよね。
    さて、インプスブログではどのように発表するのか?楽しみですね。
    シムのアジャストの問題もありますが、新車からキチンとグリースアップされて出荷されているのか?
    最近のジムニー初めてO/Hするとグリース不足がよく見受けられます。キングピンベアリングなどは表面にしか塗布されておりませんね。
    生産ラインではどういうふうに組んでいるのか?いつも疑問に思います。
    ベアリングのグリース充塡は地味な作業です。ですが、効く整備ですね!

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  4.  例のJB用4枚セットのコンビネーションシムは、薄->厚のコンビネーション順はマニュアルに記されてるのかな?最初にきちんと把握しておかないと細かい調整をする段で、適当になっちゃいそうな不安があるよね。あと上下均等じゃないといけないってのを、面倒がってやらないというシーンも目撃したことがある。インプスじゃそういうことはないでしょうけど。
     生産ラインではアクスルAssyを組み付けるだけです。アクスルのサプライヤー段階では、ベアリングの種類によりますが、例えばキングピンベアリングだと「グリースを塗布して」組まれます。キングピンベアリングだとパック充填はしません。組み立て後はナックルアームにバネばかりを当ててプリロードを検品し、メーカーに納入するようです。
     グリースは温度変化、重力、水分の混入によって流れやすいものです。O/Hというよりも、もう少し頻繁に「メンテナンス」することを進める方がいいかな、と思います。特にダートやオフロードを走る人は、オンロードオンリーの場合よりも数段キングピンベアリングの負荷が大きいので…

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  5.  前のコメントで4枚セットのシムと書いたけど、3枚みたいですね。失礼しました。0.2、0.5、1.0mmのようです。だから調整可能な厚みは0.2、0.5、0.7、1.0、1.2、1.5、1.7mmということですね。
     新品のキングピンベアリングを使うはずですから、1mm以下で済まないと困りますけど…。
     ハブベアリングを同時交換しない場合だと、上下キングピンのシム厚均等ではちょうどいいプリロードにならないこともあるでしょう。ハブベアリングの摩耗はアクスルセンターを変えてしまうので。

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